丸セパ 即納 共栄製作所株式会社のホーム > 共栄ニュース > 共栄ニュース 2017年11月号 -第326号-

習近平独裁は「空の城」

習近平が中国共産党の「中核」、党規約に「習思想」が謳われて、まさに毛沢東以来の独裁的指導者による「新時代」だとされたのが第19回大会の総括である。

習近平は「盤石の権力を固め、独裁力を発揮する」と報じたメディアが多かった。

英『エコノミスト』誌は「習近平は世界一のパワーを手にした。世界の覇権を達成する長期的戦略を掲げ、鉄の拳でそれをなそうとしている。ダボス会議では中国があたかも自由貿易の旗手の如く振る舞った」と書いた。フィナンシャル・タイムズも同様に吠えた。「習近平は類いまれな政治家の才能を発揮し、彼の路線は中国共産党を席巻した」。

 しかし果たしてそうなのか?むしろ「空の城」を習近平は築きあげたのではないのか。

歴史学者のニーアル・ファーガソンが壊疑論の口火を切った。

「西側メディアは習近平の中国評価に際して三つのことを見落としている。

第一に『習近平思想』というが、それを煎じ詰めると中華民族の復興、偉大なる発展ということでしかない。第二に権力基盤を固めたとしたメディアがあるが、最高意思決定機関のメンバーは胡錦濤派が2人、江沢民派が1人、無派閥が1人という構成であり、この派閥均衡人事をみると権力基盤を固めたとはいえない。第三に経済政策は殆ど明示されておらず、あるいは習が目的としていることは『毛沢東2・0』ではないか?」

 後継者を明示しなかったうえ、潜在的ライバルの胡春華をトップセブンに引き上げなかった。こうした豪腕な習近平の遣り方に党内で不満が沈殿したことは明白だろう。

団派(共産主義青年団)のライジングスター胡春華は会議の途中、中座して不満を示した。大会直後、胡は広州書記を降ろされたばかりか次の任命がなく「休職」扱い。しかし、団派は「急ぐことはない」と落ち着きを見せた。新執行部の殆どが5年後に引退するが、残る汪洋は60歳代後半となり、政治局員に選ばれた団派は多くが若く、2期継続が可能な年代であるためだ。すなわち団派は5年後に照準を合わせていると考えられる。  

また習近平は軍権を牛耳ったかにみえる。ところが、抜擢された軍人らは殆どが旧南京軍区の出身者である。つまり習が若き日に過ごした福建省時代の17年間と浙江省の短期間に交わった軍人が出世した。これが習近平と軍のコネクションであり、当人の能力あるなしを問わず「お仲間」を軍幹部に軒並み任命した。(・・中略)習近平独裁体制とは空の城、未来は暗いとみるべきであろう。

ー「北風抄」より宮崎正弘ー