国内景気を下支えする訪日旅行消費額
昨年、海外から日本を訪れた旅行者は統計開始以来の最高を更新した。それに伴い、旅行者の消費額は8兆円を超え、インバウンド需要はコロナ禍以前の水準を上回った。それは、国内景気の下支え役を果たしている。旅行者の行く先は全国に分散しており、地方経済にも重要なプラス要因になっている。
当面、円安傾向が続くとみられ、訪日外客数が大きく減少することはないだろう。ただ、人手不足の深刻化など、関連分野では制約に直面する事業者も多いようだ。
2024年のインバウンド需要
政府は、2024年の訪日外客数(速報)が前年比47.1%増の3686万9900人と発表した。政府が日本への団体旅行を解禁した中国や、台湾、韓国などのアジア諸国、さらには米国からの訪日客は増加傾向を示した。外国為替市場で円安が進行したことも追い風だった。
観光庁によると、訪日外国人旅行消費額(速報)は前年比53.4%増の8兆1395億円だった。2019年比では69.1%増だ。国と地域ごとに見ると、中国は1兆7335億円(構成比21.3%)、台湾は1兆936億円(同13.4%)、韓国は9632億円(同11.8%)、米国は9021億円(同11.1%)、香港は6584億円(同8.1%)だ。上位5つの国・地域で全体の65.7%を占める。海外からの観光客の消費は、GDPの計算上では輸出に含まれる。年間の輸出額で比較すると、訪日外国人旅行消費は自動車(約17.7兆円)に次ぐ規模に成長し、半導体など電子部品(約6.1兆円)を上回った。人口減少や物価高などで国内旅行者が伸び悩むなか、インバウンド需要がその減少分を埋め合わせて余りある状況だ。特に、地方経済にとっては大きな福音になっている。
求められる受け入れ態勢の整備
海外からの観光客の増加は、飲食・宿泊・交通など地方経済の成長と産業振興に寄与した一方で、様々な課題も顕在化した。日本では人手不足が深刻だ。賃上げをしても思ったように労働力を確保することができず、需要を取りこぼす事業者は多い。飲食業などでは、人手不足倒産に陥る事業者も増加傾向にある。
旅行者過多=“オーバーツーリズム”の問題もある。特定の観光地では観光客が急増し、渋滞・騒音などの生活環境に悪影響が出ている。その解決策の一つとして、“観光税”の導入がある。京都市は宿泊税の上限を、これまでの1泊1000円から1万円に引き上げる方針を明らかにした。税収の増加分は混雑緩和やごみ対策などに用いる。
また、海外旅行者一人当たりの消費額引き上げを目指し、富裕層向けサービスを拡充する企業も増加傾向だ。富裕層向けのツアープランを作成し、マーケティング戦略を打つケースもある。官民の知見を生かして、今後、問題に対応することが重要だ。無理なくインバウンド需要を持続的に増加させるため、様々な工夫が必要になるはずだ。
<TEIKOKU NEWSより>