マダニに注意
近年、マダニが媒介する感染症による死亡例が全国的に報告されており、中でも「SFTS」(重症熱性血小板減少症候群)は深刻な脅威となっている。SFTSはウイルスによる感染症で、致死率が最大30%にも達するとされている。高齢者を中心に重症化するケースが多いが、若年層でも感染する可能性がある。
主な症状は発熱、関節痛、食欲不振などであり、重症化すると意識障害や多臓器不全に至る危険もある。SFTSウイルスは、「フタトゲチマダニ」や「ヤマトマダニ」といったマダニを介して人に感染する。これらは、春から秋にかけて活動が活発になり、山林や草むらに生息している。感染例は西日本に多く、2025年には全国で感染者91人、死者9人が報告され、過去最多となった。中には、マダニに咬まれた猫を診察した獣医師が死亡するなど、動物を介した間接的な感染事例も確認されている。
犬や猫などのペットは野外でマダニに咬まれやすく、体に付着したマダニが飼い主に被害を及ぼす可能性がある。このため、ペットに対する予防措置も重要であり、定期的な動物病院でのチェックや駆虫薬の使用が推奨されている。学校や地域イベントを通じた講習会では、子どもから大人まで広く知識の普及が図られている。さらに、地球温暖化の影響によりマダニの生息域が北上しており、これまで感染例が少なかった地域でもリスクが高まりつつある。SFTSはもはや特定地域の問題ではなく、全国的な公衆衛生上の課題といえる。
感染を防ぐためには、個人の予防対策が不可欠である。野外活動時は、長袖・長ズボン、帽子を着用し、首元をタオルなどで覆うとともに、虫よけスプレーを使用することが望ましい。帰宅後は衣類をすぐ洗濯し、入浴してマダニが付着してないか確認する習慣も有効である。万が一マダニに咬まれた場合、自分で無理に引き抜かず、皮膚科などの医療機関を受診することが重要で、マダニの口器が皮膚内に残ると感染のリスクが高まるため、専門的な処置が必要となる。咬まれた後に発熱や倦怠感があれば、速やかに医師に相談し、マダニに咬まれた経緯を伝えることが大切だ。
マダニは非常に小さく見逃しやすい存在だが、命にかかわる媒介者となることを忘れてはならない。夏休み中、キャンプやハイキングなど野外活動の機会が増える今こそ、正しい知識と予防策を備え、安全なレジャーを心がける必要がある。
<レーダーより>