丸セパ 即納 共栄製作所株式会社のホーム > 共栄ニュース > 共栄ニュース 2015年8月号 -第298号-

中国主導「AIIB」は矛盾だらけ

中国主導の「アジアインフラ投資銀行」(以下、AIIB)に現在までに参加表明したのは57の国と地域。とくに英国をはじめ欧州勢が参加したことは米国を驚かせた。

これは中国の「外交的勝利」でもある。米国は中国の意図がIMF・世銀体制への挑戦であるなら厳重な警戒が必要だとし、日本は米国の動きを見極めながら慎重な態度で結論を先送りしている。3月末、ルー米財務長官は中国を訪問し、李克強首相と会見した。その席でAIIBに言及し、「同盟国の参加に反対はしないが、中国は既存の国際金融機関と協力すべきである」と述べた。従来の対中対決姿勢から大きく後退し、条件付きで協調するという宥和路線への政策変更である。 ところが『人民日報』はルー発言の都合のよいところだけを抜き出して宣伝キャンペーンを展開し、「米国の参加を歓迎」としたため、日本のメディアは慌てふためいて「米国も参加検討か」と飛躍的な報道を展開した。中国のマスコミ工作にまんまと引っかかったと言える。

IMF基準は加盟国85%の賛成で決定されるが、米国の出資比率が15%以上であり、拒否権を発動できる。IMFの基準は厳正な条件が網羅されており、融資相手国の経済政策にも介入できる。このため嘗て韓国は救済されたが、ギリシャはたびたびのデフォルト、今も揉め続けている。そのうえIMFは官僚的で決定までの審査に時間がかかりすぎるという批判が多い。中国がすすめるAIIBは細則も拒否権に関しても審査方法、融資条件等もまったく曖味である。TPPが足かけ四年も交渉して最終的な合意にほど遠いように、オバマ政権の元で成立しない可能性もでているが、54もの国と地域が参加するAIIBに細目合意が達成される頃には中国の外貨準備は底をついているのではないか?  虎の子の米ドルが、高級幹部や国有企業の経営者等によって海外へあらかたが持ち出され、加えて無謀な海外投資、プロジェクトへの出資やら外国企業の買収などで外貨準備が激減し、台所は火の車なのである。3兆8400億ドルあるとされる中国の外貨準備は空に近く、かろうじて保有する米国債権はドルと人民元交換の担保であり、引き揚げるわけにはいかない。だから中国はいま猛烈に外国の金融機関から外貨建てでカネを借り入れている。対外プロジェクトにも支払い遅延が生じはじめた。海外で中国企業が展開する大型プロジェクトが資金不足で次々に中断、挫折、撤退が相次いでいる。ある日突然、人民元が紙くずと化けるのではないかとする庶民の不安が広がり、ビットコインの80%が中国人、庶民は金買いに走り、人民元をなるべく手元に置かないように心がけている。この中国の現実とAIIBの大風呂敷には大きな乖離がある。

※宮崎正弘コラムより