丸セパ 即納 共栄製作所株式会社のホーム > 共栄ニュース > 共栄ニュース 2019年4月号 -第343号-

2%目標に思う

 8%の消費税率が10%にアップするまであと5カ月。増税に反対する声は「2%の物価目標を達成しデフレを克服するべきだ」というリフレ派の陣営にも多い。

 その代表格は昨年3月まで日銀副総裁だった岩田規久男氏だろう。話を聞いてみた。

 「物価上昇率が2%に届かないのは2014年4月の消費税引き上げが原因。13年1月の共同声明については、デフレ脱却前の増税による財政再建はしないことを明記するべきだった。」   

「13年1月の共同声明」というのは発足直後の第二次安倍政権が、日銀に初めて物価目標を認めさせた文章だ。「日本銀行は、物価安定の目標を消費者物価の前年比上昇率で2%とする。(中略)金融緩和を推進し、これをできるだけ早期に実現することを目指す」と記されているが、同時に政府は財政再建に努めねばならないことも書き込まれた。岩田氏は『デフレ脱却まで消費税増税を実施しない』という共同声明第二弾が必要だと強調する。(中略)  

今から18年前、森喜朗内閣は、「日本は緩やかなデフレにある」との見解を表明した。これが有名な「デフレ宣言」だ。白川前日銀総裁は昨年刊行した『中央銀行』でこう書く。「物価下落の解消、デフレ脱却こそが日本経済の最大の課題であるという認識は正しくない」「デフレ宣言ほど、後々の経済運営に大きな影響を残した判断はなかった。」  

この指摘の通り、宣言以降、金融緩和を求める勢力は増大を続け、12年暮れに政権に返り咲いた安倍首相は「責任を果たせ」と日銀に2%の達成を迫った。  

しかし、アベノミクス開始から6年。財務相は2%に固執しない姿勢を強調。首相も最近は「政治の場で重要なのは雇用の確保だ」とは言うものの、2%を前面に出すことを控えているように見える。  

政府高官はこう話す。「破綻寸前の財政にしろ、進まない規制改革にしろ、日本の成長のためには大きな変革が必要だった。安部政権が誕生するまでは『もう日本には時間が残されていないのではないか』という危機感があったが、アベノミクスの導入により時間が稼げると思った」2%達成のために日銀が大規模な緩和を続ける→金利もきわめて低い状態が続く→この間に財政再建や成長のための諸改革を進めれば、破綻が避けられるー。こういうシナリオだ。しかし、結果的に財政再建も諸改革も大きな進展が得られず、「時間稼ぎ」はうまくいかなかった。政策には「何のために」という目的の明示が必要だ。主権者たる国民の理解を得るためだ。2%の物価目標を軸とするアベノミクス、そしてその原因となった13年1月の共同声明を総括し、政策目標を整理し直す時が来ているのではないか。

(炉辺解説-軽部謙介)