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糸のように

 中島みゆきの珠玉の名曲「糸」に着想を得た映画『糸』が4月24日に全国公開される。「糸」は中島みゆきが知人の結婚を祝し、人を糸に見立て男女の出逢い、愛、人生を歌った曲で1998年にリリースされた。本人のみならず多くのシンガ―によって歌い継がれ、音楽の教科書にも掲載された。

 「縦の糸はあなた 横の糸は私 織りなす布はいつか誰かを暖めうるのかもしれない」。人を糸にたとえ、別の糸と出逢うことで「布」という新しい形になり、この新しい形が誰かを暖め、優しさや愛になりうる。この歌詞はたいへん奥深いが、糸へんの漢字、糸へんのつくる言葉も同じく奥深い。

 昔から糸と人々の生活には密接なつながりがあり、糸へんの漢字には日々の暮らしにまつわる言葉が多くみられる。糸を同じ方向に揃えることから、糸に方で「紡ぐ」。衣服の破れなどを補修する、すなわち糸を善くすることで「繕う」。「糸を練る」といえば、糸を煮詰めて柔らかくすることを意味するが、考えを煮詰めることも「練る」という。今、これを書いているが、この行為そのものが糸へんである。全体の構成・考えを練り、言葉を綴り、文章を編集する。「編集」もそうであるが、組織、統括、集約、これらの言葉は“まとまり”を意味する。糸へんが使われる所以は、糸を束ねるところにあるのだろう。

 そして人と人との出逢い。糸と糸が逢うことで「縫う」。糸に吉で「結」となり、結ぶ、結合、団結と人と人とのつながりを意味する。どうして「吉」なのかというと、吉の字は幸福を暗示するから、福を結んで「結婚」となるわけだ。

 糸へんに冬で「終」。冬は四季の終わりを意味する。終わりという字は、糸が切れるような終わりを意味するのではなく、終わりの次にある始まり、 “春”を意味するから、糸へんに冬があてられたとも考えられよう。

 最後に中島みゆき「糸」の末尾から。

 「縦の糸はあなた 横の糸は私 逢うべき糸に出逢えることを 人は仕合わせと呼びます」。

 春は出逢いの季節。人生は時に一つの出逢いにより大きく変わる。糸と糸とが出逢いどんな布を織りなすか。一つ一つの出逢いを大切にしたい。

<レーダーより>