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ChatGPT

ChatGPT

 アメリカの政治リスク専門の調査会社ユーラシア・グループが発表した2023年「世界の10大リスク」によると、3位に「Weapon of Mass Disruption」(大混乱生成兵器)という聞き慣れないリスクが挙げられている。大混乱生成兵器とは、ChatGPT (チャットジーピーティー)に代表されるAIにアシストされた「デジタル影響工作ツール」(AI生成器)のことである。

 従来のネット検索では、例えば大手総合商社A社の業績を知りたいとき、「社名」「業績」の二つの単語を指定して検索をかけると、IRのウェブページを筆頭に、証券会社のサイトなど関連するウェブページが表示される。これに対しChatGPTの場合は、質問形式で「A社の業績を教えてください」と入力するだけで高度に言語処理された文章を日本語で回答してくれる。学術論文や小説も書けるというから驚きだ。

 ChatGPTは、アメリカの人工知能の研究を行う会社「OpenAI」によって開発されたもので、昨年11月の無料公開(一部有料)から僅か数か月でユーザー数は1億人に到達。すでにマイクロソフトやグーグルなども競合サービスの開発に乗り出している。

 しかし、こんなにも便利なツールだというのに、なぜ世界の重大リスクとしたのだろうか。その理由は、ChatGPTの普及によって今まで氾濫していた企業や個人のウェブサイトやSNSが淘汰され、ウェブ数の減少が予測されるからだ。そうなると世界中のウェブ業界で仕事が無くなり、論説家や証券アナリストなど文章を作成する職業も要らなくなってしまう。

 もう一つのリスクは、AIが事実と異なる回答を生成することも多く、「本当に正しいのか」という疑念があり、著作権や研究分野・教育現場への影響も懸念される。フィッシング詐欺メールも簡単に作成してしまう。さらには、AI特有のアルゴリズムバイアスによって、差別的な回答や思想的・政治的に著しく偏向した回答が生成されてしまうことがある。ユーラシア・グループでは「AIの技術的な進歩が民主主義を弱体化させるツールとなって社会の信頼を損ない、デマゴーグや権威主義者に力を与え、ビジネスや市場を混乱させる」と指摘している。

 とはいえ、いくらテクノロジーが進歩しても情報そのものの本質は変わらない。情報の真贋を見極める情報リテラシーを身につけるとともに、AIから適切な回答を導き出す高い質問力が必要になりそうだ。

                   <レーダーより>