建設業界の「新3K」
通勤の途中でビルの建設現場に出くわすことがあるが、日々出来上がっていく様子を見るのも結構面白い。この業界では、とび、土工、電気、内装など技術を身に着けた専門の職人が、各工程によって入れ替わり立ち代わり工事を進めていくのが特徴だ。
大型マンションの一般的な工程は、まず外部と工事現場の境を作るために防音、防塵ゲートを設置し、仮囲いを行うところからスタートする。そして着工。建物を支える杭を地盤に打つ杭打ち工事、地下構造体を作る土工、掘削、地下躯体工事に入り、地下の柱、床、壁といった骨組み部分を施工していく。
地下の基礎の次はいよいよ地上躯体工事が始まる。建物の骨組みとなる鉄骨を巨大なタワークレーンによって軽々と吊り上げ、組み立てていく。骨組みが完成したら階層ごとにコンクリートを打設し、ようやく建物らしくなっていく。そして、建築物の外装工事に引き継がれる。屋外に面しているため、日光や風雨の影響を受けやすく耐久性、耐水性が求められ、センスを左右するデザインも大切である。次に、天井・フローリング貼り、壁のクロス貼りなどの内装工事を進め、一部並行して給排水・ガス・空調などの設備工事、電気工事、エレベーター設置も行われる。終盤には、環境整備としての造園植栽、舗装工事などの外構工事が行われる。これらが完了したら、足場を外してフィニッシュ、晴れて竣工となる。着工から竣工までの日数は、鉄筋コンクリート造の場合、フロア数+3カ月とされている。つまり、7階建てなら10カ月となるが、これはおおまかな目安で床面積などによって差が出てくる。
建設業の若者離れが問題になっているが、これは長らくこの業界に根付いている“きつい、汚い、危険”の「3K」が起因しているのではないか。運送業界の2024年問題が各方面でクローズアップされているが、「建設業の2024年問題」も業界内のみならず、大きな課題である。長時間労働が常態化していた建設業においては、いきなり労働環境を変えることが難しいと判断されたため、運送業と同様に5年間の猶予措置がとられた。しかし、慢性的な人材不足や従業員の高齢化、現場の職人不足が進み、ほとんどの企業で対応が遅れているのが現状である。
これを打開するのが、“給与、休暇、希望”―――これからの魅力のある建設業界を創るために、若手が働く意欲を湧きたてる「新3K」である。
<レーダーより>