丸セパ 即納 共栄製作所株式会社のホーム > 共栄ニュース > 共栄ニュース 2016年7月号 -第309号-

ムヒカ前大統領

4月5日のテレビニュースカメラが映していたのは、普段着のようなジャンパー姿で羽田空港到着口に姿を現した、ごく普通の外国人の太っちょなオジサンだった。人口340万人の南米の小国・ウルグアイのホセ・ムヒカ前大統領(80)である。 

2012年6月、リオ・デ・ジャネイロで環境問題を議題に国連「持続可能な開発会議」(通称「地球サミット・リオ会議」)が開かれた。初日は各国首脳によるスピーチ。国名順に行われた最後に、ムヒカ氏は登壇した。自国のスピーチが終わると退席してしまう国が多かったから、その時会場に残る聴衆はさほど多くはなかった。そんな中、ノーネクタイのシャツにジャケットというラフな服装で演壇に立ったムヒカ氏は、たった8分間だったが、後に「もっとも衝撃的なスピーチ」と呼ばれる演説を行った。

 「(私の)疑問を声に出させてください。『持続可能な発展と世界の貧因をなくす』とは、裕福な国々の発展と消費モデルを真似することなのでしょうか。マーケット経済がマーケット社会を作り、そのグロバリゼーションが世界の隅々まで原料を探し求める社会にしたのではないでしょうか。残酷な競争で成り立つ消費社会主義で『みんなで世界を良くしていこう』といった共存共栄的な議論は、できるのでしょうか」

「(現代は)人類が消費社会にコントロールされています。私たちは発展するために生まれてきているわけではありません。幸せになるためこの地球にやってきたのです。貧乏な人とは、少ししか物をもっていない人ではなく、無限の欲があり、いくらあっても満足しない人のことです。自分自身に問いかけます。これが人類の幸せなのか・・・と。発展は、人類に幸福をもたらすものでなくてはなりません」(抜粋・一部要約) 

演説が終わると、一斉に立ちあがった聴衆からの拍手が、しばらく鳴り止まなかった。そのムヒカ氏は大統領時代、公邸暮らしを断って郊外の質素な農場に妻と住み、菊を栽培していた。車は友人から貰った古いフォルクスワーゲン。飛行機の移動はエコノミークラスを譲らなかった。「世界一貧しい大統領」と言われた所似だ。

インタビューで語っている。「みんな豊かさを勘違いしていると思う。大統領というのは多数派の人が選ぶのだから、多数の人と同じ生活をしなければいけない。少数派ではいけない。国を治める者は、その国の平均でなければならない」

 私たちも学びたい。何より、ぜひとも学ぶべきだ、政界のリーダーたちは。